保育士と保育教諭は、保有資格や法的根拠が異なるだけでなく、その専門性が発揮される実践の現場においても、仕事内容や求められる役割に明確な違いが見られる。両者ともに子どもの健やかな成長を願うという点では共通しているが、そのアプローチの重点や、日々の業務で意識するべき事柄は、それぞれの専門性に基づいて異なっている。まず、関わる子どもの年齢層とその生活への関与の深さが挙げられる。保育士が働く奈良県の保育所は、〇歳からの乳児を受け入れることが多く、その仕事内容は授乳やおむつ交換、安全な睡眠の確保といった、生命維持に直結する「養護」の側面が非常に大きい。言葉を話せない乳児の些細な変化から心身の状態を読み取り、絶対的な信頼関係を築く「愛着形成」を支えることは、保育士ならではの高度な専門性である。一方、保育教諭が働く認定こども園では、〇歳から五歳までの幅広い年齢の子どもたちが在籍する。そのため、保育教諭は乳児期に求められる手厚い養護のスキルと、幼児期に求められる教育的なアプローチの両方を、一人の専門家として実践する必要がある。次に、日々の保育の指針となる「指導計画」の作成においても違いは顕著だ。保育士は、厚生労働省の「保育所保育指針」に基づき、遊びや生活といった活動全体を通して、子どもの心身の調和的な発達を目指す計画を立てる。そこでは、子どもの自発性や主体性が重んじられ、計画はあくまで保育の方向性を示すものとして柔軟に運用される。対して、保育教諭は、この「保育所保育指針」に加え、文部科学省の「幼稚園教育要領」の内容も踏まえた指導計画を作成しなければならない。これは、健康、人間関係、環境、言葉、表現といった五領域に沿って、幼児期に育てたい資質・能力を明確にし、計画的・体系的な教育活動を展開することを意味する。例えば、一つの「お店屋さんごっこ」という活動をとっても、保育士は子ども同士のやり取りや協同性を育むといった社会性の側面に重きを置くかもしれないが、保育教諭はそれに加え、文字や数への興味を引き出すといった教育的なねらいをより明確に意識し、活動を構成する必要がある。さらに、職場環境と求められる協調性も異なる。保育所では、基本的に保育士という同資格の職員集団で構成される。一方、認定こども園は、その成り立ちから、保育士資格のみを持つ職員と幼稚園教諭免許状のみを持つ職員(経過措置による)が混在しているケースも少なくない。そのような環境で、保育教諭は、福祉と教育という異なる文化や価値観を持つ職員間の「架け橋」となり、園としての一貫した保育・教育方針を築き上げていく、リーダーシップや調整能力といった高度なコミュニケーションスキルが求められる。保護者支援においても、保育教諭は子どもの生活面での成長に加え、教育的な観点からの発達についても専門的な説明が求められるなど、より複合的で多角的な視点が必要となる。このように、保育教諭の仕事内容は、保育士の役割を内包しつつ、さらに教育者としての専門性を上乗せし、それらを統合・発展させる、より広く深い知識と技術が要求される専門職なのである。
実践現場での役割比較、保育士と保育教諭の仕事内容と専門性