児童養護施設という、極めて専門性の高い領域で働くためには、子どもたちへの熱い想いだけでは不十分である。子どもの心身の安全を守り、その発達を適切に支援するためには、法的に定められた資格と、この仕事ならではの特殊な環境に適応するための人間的な資質の両方が不可欠となる。児童養護施設の最前線で子どもたちの生活を直接支える専門職には、主に「児童指導員」と「保育士」の二つがある。施設によっては両者の業務内容に大きな違いはない場合も多いが、その資格を取得するためのルートは明確に異なる。まず、「児童指導員」は、特定の試験に合格して得られる資格ではなく、「任用資格」と呼ばれるものである。これは、その職に就くための条件や基準を満たしていることを意味し、一般的には大学での学歴や特定の資格の保有によって認められる。最も一般的なルートは、四年制大学において、心理学、教育学、社会学、社会福祉学のいずれかを専修する学部・学科を卒業することである。これらの学問を通じて得られる、人間の心理や発達、社会構造に関する専門知識が、子どもを理解するための基礎となる。また、小・中・高等学校の教員免許状を保有している場合や、社会福祉士、精神保健福祉士といった福祉系の国家資格を保有している場合も、児童指導員としての任用資格が認められる。もう一方の「保育士」は、ご存知の通り、厚生労働省が管轄する国家資格である。保育士養成課程のある大学、短大、専門学校を卒業するか、年に二回実施される国家試験に合格することで資格を取得できる。特に乳幼児のケアに関する専門知識や技術を持つ保育士は、低年齢の子どもが多く入所する児童養護施設において、その専門性を大いに発揮することができる。施設によっては、学齢期の子どもの学習支援には教員免許を持つ児童指導員が、幼児の生活支援には保育士が、といった形で役割を分担している場合もあるため、複数の資格を保有していると、活躍の場はさらに広がるだろう。しかし、これらの資格はあくまでスタートラインに立つための切符に過ぎない。この仕事で本当に求められるのは、資格の名称の裏に隠された、人間としての深い資質である。第一に、圧倒的な「忍耐力」と「精神的な強さ」。子どもたちは、その過去の経験から、大人を試すような行動を繰り返す。暴言や反抗的な態度に対し、感情的にならず、その行動の背景にある子どもの「助けて」というサインを読み解き、一貫した態度で関わり続ける強さが求められる。第二に、相手をありのまま受け入れる「受容力」と「共感力」。子どもたちの壮絶な過去や、それによって生じる行動を、良い悪いとジャッジするのではなく、「それもあなたの一部だね」と丸ごと受け止める姿勢が、信頼関係の第一歩となる。そして第三に、自分自身の感情を客観的に見つめ、コントロールする「自己覚知」の能力。職員自身が心身ともに健康でなければ、子どもたちを支えることなど到底できない。児童養護施設で働くことは、資格という鎧を身につけ、その上で、自分自身の人間性を総動員して、子どもの魂と向き合う、覚悟のいる専門職なのである。
専門職への道、児童養護施設で働くために必須の資格と資質