園生活の中には、日々ささやかな出来事が積み重なっています。大人から見ればほんの小さなことに見えるかもしれませんが、子どもたちにとっては大きな挑戦であり、大切な成長の一歩です。
先日の園でのこと。ある子が苦手だった野菜を、自分から「食べてみる」と言って口に運びました。ほんの一口でしたが、その子にとっては大きな勇気の表れであり、見守る先生たちも思わず笑顔になりました。苦手なことに挑戦する気持ち、そして「できた!」と感じられる達成感が、次の成長への原動力になっていくのだと思います。
また別の日には、園庭で転んで泣いていた子のところへ、友だちが駆け寄り「だいじょうぶ?」と声をかける姿がありました。優しく手を差し伸べる子どもの表情は、まるで小さな先生のよう。思いやりの心は教え込まれるものではなく、日々の生活の中で自然に育まれていくものだと感じます。
このような瞬間は、園で働く大人にとっても宝物です。子どもたちが一歩一歩進んでいく姿に気づき、その成長を共有できることは、保育の仕事の大きな喜びのひとつです。保護者の方にとっても、家庭では見えにくい「小さな変化」を園から伝えられることは、安心や信頼につながっていきます。
近年は子育てにおいて「できること」を数値で測る風潮もありますが、本当に大切なのは、子どもたちが「やってみたい」と思えた気持ちや、「ちょっとできた」と感じられる経験です。その積み重ねが自信を育み、やがて大きな力へと変わっていきます。
そして私たち大人にできることは、その小さな一歩を見逃さず、「よく頑張ったね」「見ていたよ」と声をかけること。言葉のひとつで子どもたちの心は大きく動き、さらに前へ進もうとする力を得ます。園は、そんな前向きな気持ちがあふれる場所でありたいと思っています。
子どもたちの成長は、園と家庭が一緒になって支えていくものです。園での小さなエピソードを保護者の方に伝えると、「家では見られなかった姿を知ることができてうれしいです」と喜んでいただけることがあります。その言葉は私たちにとっても励みとなり、さらに子どもたちの成長を応援していこうという力になります。
また、地域とのつながりも大切です。園で育った子どもたちが地域の人々にあいさつをしたり、行事に参加したりすることで、周囲の大人に見守られながら育っていきます。地域全体が子どもを大切にする空気は、子どもたちに安心感を与え、思いやりの心を自然に育みます。
一人ひとりの子どもの歩みはゆっくりかもしれませんが、それぞれのペースで確かに前進しています。その過程を共に喜び合えるのが、保育の仕事の大きな魅力です。これからも園が「安心できる場所」であり続けるために、職員一同が心を込めて日々の保育にあたっていきたいと思います。
これからも毎日の生活の中で、一人ひとりの子どもが見せてくれる成長を大切にし、その喜びを保護者の方々と分かち合えるよう、心を込めて奈良県大和高田市の保育園の仲間とともに保育を続けていきたいと考えています。