雷が怖くなくなった日
私は、小さいときから雷が怖くて、いつも机の下やベッドの中に逃げていました。幼稚園で雷が鳴ったときも、あまりの怖さに机の下に入ったら、近くにいた男の子に、泣き虫と言われて笑われたんです。
そうしたら、他の子も口々に弱虫と私のことをからかいだして、とうとう私は泣いてしまいました。すると、先生がいきなり大きな声で叫んで机の下に隠れたんです。他の子がキョトンとするなか、先生はブルブルと震えて、「先生も雷が怖いの」と言いました。すると、他の園児達の中からも、私も怖い、僕も怖いと言い出したんです。雷が怖いのは私だけじゃないんだという安心感からいつしか私は泣き止んでいました。
「雷がやむまで皆で遊びましょう」
そういって先生は部屋の中でできる遊びを教えてくれました。
そして、いつのまにか私は雷が鳴ってもそんなに怖くなくなりました。
大きくなって、後から考えたら、先生が雷が怖いって騒ぐはずないんですよね。つまり、あれはからかわれている私のための演技だったんです。
今でも雷が鳴るとその時のことを思い出します。
もちろん、今ではもう雷が怖くはありませんが、あのときの先生の優しさは、大きくなっても忘れたことはありません。