全ての子どもが、その子らしく輝ける社会を目指す上で、加配保育士という仕事が持つ意義は、ますます大きくなっている。それは、保育士としてのキャリアの中で、より専門性を深め、社会貢献性の高い分野で自らの力を試したいと考える人々にとって、大きな魅力を持つキャリアパスである。この道を目指すために必要な資格、求められる資質、そして、この仕事ならではの深いやりがいについて、詳しく見ていこう。まず、加配保育士になるために、特別な国家資格や免許が存在するわけではない。その土台となるのは、全ての保育士と同じ「保育士資格」である。しかし、採用の現場では、保育士資格に加えて、障がいや発達に関する専門的な知識や経験が、当然ながら重視される。具体的には、大学などで、心理学や教育学、社会福祉学を専攻していた経験や、過去に障がい児保育の経験があることは、大きなアドバンテージとなる。また、近年、多くの保育士が受講している「キャリアアップ研修」の八つの分野の中に、「障がい児保育」という専門分野がある。この研修を修了していることは、加配保育士として働く上での、体系的な知識を持っていることの、客観的な証明となるだろう。資格以上に重要となるのが、この仕事に対する「適性」や「人間的な資質」である。第一に、何事にも動じない「忍耐力」と、子どもの行動の背景を理解しようとする「共感的な姿勢」。子どもたちは、その内に秘めた不安や困難さから、時に、大人を試すような行動や、理解しがたい行動をとることがある。それに対して、感情的にならず、常に冷静に、そして温かく向き合い続けることができるか。その人間的な器の大きさが問われる。第二に、子どもの些細な変化や、集団の中でのサインを見逃さない、鋭い「観察力」。そして、その観察から得た情報を基に、「今、この子に必要な支援は何か」を論理的に考え、創造的に実践できる「課題解決能力」が求められる。第三に、前述の通り、極めて高い「コミュニケーション能力」と「協調性」だ。担任保育士や保護者、そして外部の専門家など、多くの人々と円滑な関係を築き、チームの一員として機能する力がなければ、この仕事は成り立たない。では、こうした厳しい要求を乗り越えた先にある、加配保育士の「やりがい」とは何だろうか。それは、何よりもまず、一人の子どもの「成長の瞬間に、誰よりも深く立ち会える」という感動である。言葉が出なかった子が、初めて名前を呼んでくれた。友達の輪に入れなかった子が、自分から遊びに誘うことができた。その一つひとつのステップは、その子の人生における、大きな大きな一歩だ。その傍らで、共に喜び、支えることができる経験は、何物にも代えがたい。また、担当する子どもの保護者から、深く感謝され、信頼されるパートナーとなれることも、大きな喜びだ。「先生がいてくれるから、安心して預けられます」。その一言が、日々の苦労を吹き飛ばしてくれる。加配保育士への道は、平坦ではないかもしれない。しかし、それは、一人の子どもの人生を、そして、多様性を認め合うインクルーシブな社会の未来を、自らの手で切り拓いていくという、誇り高い使命に満ちた、挑戦する価値のあるキャリアなのである。