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保育士のやりがいとは?「ありがとう」の言葉に秘められた真価
保育士という仕事は、多くの人が「子どもが好き」という純粋な気持ちで志す、夢のある職業です。しかし、実際に現場に立つと、その理想だけでは乗り越えられない厳しい現実に直面します。膨大な業務量、絶え間ない緊張感、複雑な人間関係、そして、その責任の重さに見合っているとは言えない待遇。心身をすり減らし、「もう辞めたい」と感じてしまう保育士が後を絶たないのも事実です。では、なぜ、それでも多くの保育士は、この仕事に誇りを持ち、現場に立ち続けるのでしょうか。その原動力の源泉となっているのが、他のどんな仕事でも味わうことのできない、深く、そして温かい「やりがい」の存在です。 奈良県で保育士のやりがいを語る上で、決して欠かすことのできないもの。それは、子どもたちから、そして保護者から、心を込めて伝えられる「ありがとう」という、たった5文字の言葉の重みです。もちろん、どんな仕事にも「ありがとう」と感謝される場面はあるでしょう。しかし、保育士が受け取る「ありがとう」には、特別な意味が込められています。それは、一人の人間の「人生の土台」を、共に築き上げたことへの、深い感謝と信頼の証なのです。 子どもたちからの「ありがとう」は、私たちの心を最も純粋な喜びで満たしてくれます。転んで泣いている時に、優しく絆創膏を貼ってあげた時の、はにかんだような「ありがとう」。一緒に絵本を読み、その世界に夢中になった後の、満足げな「ありがとう」。そして、卒園の日、たくさんの思い出を胸に、「先生、三年間、本当にありがとう」と、涙ながらに伝えてくれる、成長した子どもたちの言葉。それらは、私たちが注いだ愛情が、確かに子どもの心に届き、その健やかな成長の糧となったことを、何よりも雄弁に物語ってくれます。子どもたちの真っ直ぐな感謝の言葉は、日々の疲れや悩みを、一瞬で吹き飛ばしてしまうほどの、魔法の力を持っているのです。 そして、もう一つ、保育士としての専門性と誇りを深く実感させてくれるのが、保護者からの「ありがとう」です。初めての子育てに戸惑い、不安で押しつぶされそうになっているお母さん。「先生に相談して、気持ちが楽になりました。ありがとうございます」。仕事と育児の両立に奮闘し、罪悪感を抱えているお父さん。「先生たちがいてくれるから、安心して仕事ができます。本当にありがとうございます」。発達に課題を抱える我が子の将来を案じ、途方に暮れている保護者。「先生がこの子の良いところをたくさん見つけてくれて、希望が持てました。ありがとうございます」。これらの言葉は、私たちが単なる「子どものお世話係」ではなく、子育てという、人生における最も重要で、そして困難な道のりを、共に歩む「パートナー」として認められた証です。保護者の人生に深く寄り添い、その支えとなれたという実感は、保育士という仕事の社会的な意義を、何よりも強く感じさせてくれる瞬間です。 保育士の仕事は、決して楽な道ではありません。しかし、日々の中で交わされる、無数の「ありがとう」という言葉のシャワーを浴びるたびに、私たちは、この仕事を選んで本当に良かったと、心の底から思うのです。それは、人の成長に深く関わり、誰かの人生を支えるという、人間として最高の喜びを与えてくれる、かけがえのない宝物なのです。