×

氷の女王の劇でパジャマor真っ赤なチュチュの究極の選択から私を救ってくれた幼稚園の先生

氷の女王の劇でパジャマor真っ赤なチュチュの究極の選択から私を救ってくれた幼稚園の先生

幼稚園の年長の時、お楽しみ会でクラスごとに劇をすることになり、私のクラスは『氷の女王』をやることになりました。私は雪役で、舞台上の役者が登場したり退場するタイミングで「〇〇が来たぞ」と叫びながら舞台を走り回って去るだけの簡単な役でした。劇の衣装は幼稚園が指示した条件を満たすものを各家庭で容易することになっていたのですが、メインの登場人物の衣装はかなり気合が入っていたのに対し、雪役は全身白っぽい服、という指示しかなかったそうです。母は同居していた祖母の介護をしていたこともあり、手の込んだ衣装を用意する余裕がなかったそうです。幼稚園の劇なので衣装合わせなどなく、劇本番の当日に初めて衣装を持っていく仕様でした。母が用意した衣装は、なんとキャラクターものの柄が描いてある白いパジャマを裏返したものでした。要するにただのパジャマです。生地が薄いので裏返しても絵柄がうっすらと透けていました。下半身は白いタイツという指示だったのでズボンすらなく、子ども心にも「これはないんじゃ・・」とショックを受ける代物でした。泣いて拒否しましたが他に白い服もなく、パジャマを持って幼稚園へ行きました。私以外の雪役は2人いたのですが、1人はとても可愛いフリフリの白いワンピースで、もう1人はなぜか濃い水色のワンピースでした。園の指示とは違う色でしたが、注目の的だったのは私の裏返したパジャマにタイツという奇妙すぎるスタイルでした。周りの子ども達から鬼のような突っ込みを受け、水色ワンピの子にまでバカにされ、また泣きました。自分でも裏返したパジャマよりは水色ワンピの方がマシだと思いました。すると、隣のクラスの先生が騒ぎに気づき、担任の先生を含めて数人の先生達がワラワラと私の周りに集まってきました。大人同士小声で深刻そうに、これはないね等言っているのが分かりました。そして、「ちょっと待ってて」と言われ、真っ白で素敵なバレエ用のチュチュを持ってきてくれました。幼稚園の備品だと思います。バレエのチュチュは当時クラスの女子の憧れで、私も思わぬ救い以上の待遇に歓喜したのを覚えています。「ずるい、ずるい」と他の子が連呼する中、私と水色ワンピの子の2人はチュチュに着替えることになりました。ところが、その白いチュチュはサイズが小さく背中のボタンが止まらなくて、結果的に2人とも着ることができませんでした。すると、年配のちょっと怖い先生が、まさかの真っ赤なチュチュを持ってきました。その赤いチュチュはサイズが大きく着ることができましたが、雪役に赤なんてありえないということくらい、幼稚園児の私でも分かりました。水色ワンピの子は赤を着るくらいならこのままでいいと言い、先生も「仕方ないね」と了承していましたが、パジャマの私には真っ赤なチュチュを着るよう強く迫ってきました。氷の女王の舞台で一人だけ真っ赤なチュチュを着るなんて絶対に嫌でしたが、パジャマも嫌でした。どっちがマシなのか分からず、真っ赤なチュチュを着て棒立ちになってしまいました。すると、いつの間にかいなくなっていた担任の先生が、「これなら白いチュチュ着れるかな?」と言いながら走ってきました。手には白いチュチュと、絵本の棚の上に敷いてあったレースの敷物を持っており、チュチュの裏側からボタンがとまらなかった背中の部分にレースの敷物をガムテープで止めて着せてくれました。若干不自然で着心地も良くはありませんでしたが、正面から見る分には全然わからないし、白いチュチュで劇で出られる喜びと安堵で胸がいっぱいになりました。劇の記憶は全然なにのですが、「一人だけ赤いの嫌だよね」とほほ笑みかけてくれた、あの時の先生の顔は今でも忘れられません。