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黙って見守る優しさを知りました

黙って見守る優しさを知りました

随分前のことです。その頃の私は引っ込み思案で、幼稚園等には行かないでできればずっと家にいたいと毎日思っていました。それでも容赦なく入園する運びとなり、住んでいた社宅の目の前に来る幼稚園の送迎バスに乗って毎日通わなくてはならなくなりました。そんな愚図る私をバス停まで連れて行き、時には押し込むようにバスに乗せていた母も大変だったろうなと思います。が、間違いなくもっと大変だったのは担任の先生です。私は大袈裟でなく1日1回、園で泣いていました。きっかけはどれも本当に些細な事でした。例えばお弁当の時間に、隣の子が私のお弁当を見て、「〇〇(私)ちゃん、昨日もサンドイッチだったよね」と言いました。その途端もうこの世の終わりかという絶望感に襲われ、目からザーっと涙が流れてきて俯いてしまうという具合です。するとその隣の子が「先生ー、○○ちゃんがまた泣いちゃいましたー」と大きな声で言い 、先生が私の方にやってくるという日々を毎日繰り返していました。そして何十年も経った今でも覚えているのは、先生が私の前にしゃがみ、優しい顔で私のことを見上げて見てくれている姿です。かけてくれていたであろう言葉は忘れてしまいました。でも嫌な顔をされたり 、怒られたことはありませんでした。毎日しょうもない理由で泣いていた私の話を聞いてはがっかりしていた母の顔もそれと対照的だったからか、ぼんやりと覚えています。あんなに泣いていながらも、一応毎日幼稚園に通うことができたのは、あの担任の先生の並々ならぬ忍耐力と優しさだったのは間違いありません。先生、ご面倒おかけしました。ありがとうございました。